平成20年度 厚生労働省社会福祉推進事業による研究報告書。介護保険施設における介護福祉士の配置の評価に関する研究事業 報告書(概略版)平成21年3月 第3章 結果のまとめと課題1

2.今後の課題

 社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律により、介護福祉士の養成カリキュラムが改正され、今後、一層質の高い介護福祉士を養成していくことになり、介護保険施設等においても介護福祉士をより積極的に活用することが期待される。
 介護保険施設・事業所における介護職員数(介護福祉士数/その他別)の推移をみると、年々上昇傾向にあり、介護福祉士の人数も年々増加している。

図表16 介護職員数及び介護福祉士比率の推移 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 訪問介護 通所介護

左軸;職員数 右軸;介護職員に占める介護福祉士の比率
出所)厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」より作成

 また、21年4月の介護報酬改定では、介護職員の専門性等のキャリアアップを推進する観点から、介護福祉士の保有者が一定割合雇用されている事業所が提供するサービスについて評価を行うことが予定されている。

図表17 介護従事者の専門性等のキャリアに着目した評価
サービス 要 件 単 位
訪問入浴介護
研修等を実施しており、かつ、次のいずれかに該当すること。
(1) 介護福祉士が30%以上配置されていること。
(2) 介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること。
24単位/回
夜間対応型訪問介護 12単位/回
(包括型 84単位/人・月)
通所介護
通所リハビリテーション
認知症対応型通所介護


次のいずれかに該当すること。
(1) 介護福祉士が40%以上配置されていること。
(2) 3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。
(1):12単位/回
(2):6単位/回
※介護予防通所介護
 介護予防通所リハビリ

要支援1は
(1):48単位/人・月
(2):24単位/人・月

要支援2は
(1):96単位/人・月
(2):48単位/人・月
小規模多機能型居宅介護
研修等を実施しており、かつ、次のいずれかに該当すること。
(1) 介護福祉士が40%以上配置されていること。
(2) 常勤職員が60%以上配置されていること。
(3) 3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。
(1):500単位/人・月
(2)・(3):350単位/人・月
認知症対応型共同生活介護
地域密着型介護老人福祉施設
介護老人福祉施設
介護老人保健施設
介護療養型医療施設
短期入所生活介護
短期入所療養介護
次のいずれかに該当すること。
(1) 介護福祉士が50%以上配置されていること。
(2) 常勤職員が75%以上配置されていること。
(3) 3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。
(1):12単位/人・日
(2)・(3):6単位/人・日
※1 表中(1)(2)(3)の単位設定がされているものについては、いずれか一つのみを算定することができる。
※2 介護福祉士に係る要件は「介護職員の総数に占める介護福祉士の割合」、常勤職員に係る要件は「看護・介護職員の総数に占める常勤職員の割合」、勤続年数に係る要件は「利用者にサービスを直接提供する職員の総数に占める3年以上勤続職員の割合」である。
出所 平成20年12月26日社会保障審議会介護給付費分科会(第63回) 「平成21年度介護報酬改定の概要」より作成

 今回の調査結果から、概ね以下のような結果が得られた。

 これらのことから、介護福祉士の保有者が一定割合雇用されている事業所が提供するサービスについて評価がつけられれば、より一層、介護福祉士の雇用が推進され、利用者ニーズに即した介護の提供、医療との連携、専門的知識・技術に基づく介護の提供が行われることにつながると考えられる。

 今回の調査は、介護福祉士の配置の多寡により、サービスの内容・質にどのような差があるのかを明らかにするために行ったものであるが、調査実施・集計・分析を行っていく中で、いくつかの課題が残された。

 まず、どのように介護職員によるサービスの内容・質を評価するかという点である。今回の調査では、介護職員による業務展開過程に関して、9領域計51項目を設定し、施設長による評価と、介護福祉士及び介護職員(介護福祉士以外)による自己評価を行ったものであるが、「十分である」〜「十分ではない」という尺度で回答してもらったため、特に、介護職員本人の回答については、それぞれの調査対象者が「十分」と捉える基準が異なり、結果の解釈が難しい部分が残された。目標が高い人ほど、自己評価が低くなることも考えられ、自己評価の方法、尺度については、引き続き検討していく必要がある。

 特別養護老人ホームの施設長に対するヒアリング調査結果からは、今回の調査で設定した9領域51項目以外にも、介護福祉士に対して、リーダーとしての職場の雰囲気づくりや多職種協働の推進を期待していること、自己研鑽・向上心を持った取り組みや主体的に仕事に取り組む姿勢などを期待していることが分かった。これらの内容については、今回の評価項目には十分には入れられていないため、今後、これらの内容に関する評価方法・項目等について検討していく必要がある。

 また、今回は、サービスの質の評価指標の1つとして、各施設における看取りへの対応(看取り率)、入院率、救急搬送率などを設定し、介護福祉士が多く配置されている施設ほど、看取りに対応している傾向や入院率や救急搬送率が低い傾向が見られたが、統計的な有意差は見られなかった。これらの数値については、施設の状況(母体法人、医療機関への併設等)や看護職員の配置状況にも左右されると考えられる。介護福祉士の配置により、どのようなサービス内容・質に違いがでるのかを引き続き検討する必要がある。また、特に施設サービスにおいては、職員が複数人でかかわって利用者へのサービスを提供することから、特定の職員個人のサービスの質を評価することが難しい面があるが、職員個人が提供するサービスの質の評価指標についても検討していくべき事項と考えられる。

 さらに、サービスの質の評価には、利用者満足度などの方法も考えられるが、特別養護老人ホームの入所者については、利用者満足度を調査するのが困難な状態の入所者が多いこと、家族についても面会回数が少ないケースも少なからずあること、そもそも入所者・家族にとっては、介護福祉士有資格者がどの職員であるかを認知していない可能性があることなどから、今回は利用者満足度調査を行わなかった。介護福祉士の配置が評価される流れの中で、今後はこれらの利用者満足度の観点からも検討する必要があると考えられる。

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